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案ずるより

これでひとまずわが社のメンバーは、全員登場したことになります。
それにしても、みるを筆頭にウチに生き物がどんどん増えてきたのは
私の奥さんである、ゆきちゃんのしわざです。
そして、そのたんびに私は「案ずるより生むが易し」ということわざを
思い出しては忘れてしまうのでした。
「ね、楽しいでしょ?」
と、ゆきちゃんは言います。
そのとおりなので、私は
「うん、とってもね」
と答えます。すると彼女はそらみろ、といわんばかりに
犬のケンケンのまねをして声をたてずに笑うのです。

出会って最初のうちは、20歳も年下だからと、
私は彼女を相当あなどっていたのです。いい気になって、
〈おじさん風〉を吹かせていたと思います。
ところが、それがことごとく逆風となって自分に返ってくる日が
やってきました。
つまり年上だからといって、無条件にいばっていられなくなったのです。
それからというもの、事あるごとにゆきちゃんと私の果てしない闘いが
繰り広げられることになりました。
もはやこれまで、という状況にも何度も直面しました。
そのたびに、みるが必死で仲裁に入ってくれたおかげで、私たちは
完全な破局に至らずに、もちこたえてこられたのです。

私たちは、おととし(ぴっちが来た2ヶ月後)ついに結婚しました。
そして去年、子どもが生まれたというわけです。
いやー、これからも何があるか予断は許しませんね!
by papanatti | 2005-03-26 23:02 | 家庭

吾輩はぴっちである

やってきた猫はさっそくみる・ひまわり親子と対面。
どうなることかと様子をみていると、
犬たちは最初のうち、うー、とか、わんっ、とかいいながら、
子猫を挑発するものの、子猫のほうはまさに
〈借りてきた猫〉状態で、ただぼうぜんとちょこなんとして
いるだけで、いっこうに敵対モードになりません。
そのうちひまわりが子猫の匂いを嗅ぎに近づいたり、
みるが無関心を装ったりしはじめるうちに、
あえなく平和ムードが訪れました。

猫と犬の共存の可能性を目のあたりにし、
そのかわいらしさにすっかり拒絶意識が消えてしまい、
私はもうこのちびすけを飼ってもいい、というより
飼っちゃおう、と思い始めていました。
名前は最初から「ぴっち」に決めていました。
体全体は黒くて、きれいに4つ足の先っちょに
白い靴下をはいているのが、なんとも目に
心地よかったのです。

猫好きのチバちゃんも見に来て、
「かわいいね」と言いましたが、もはや私は
「もらってくれる?」とは聞きませんでした。
もちろんゆきちゃんも大満足です。
こうしてわが社はリトル・ドッグ・アンド・キャット・プレスに
なってしまったわけです。

その夏には、にゃんこさんとの約束どおり、
観音崎のビーチで開かれた〈信也隊〉の
バーベキュー大会にも参加して、盛り上がりました。
メンバーのみんなともすぐに仲よくなって、
あれはとっても楽しかったなあ!

…で、みるとひまわりとぴっちのトリオは
絶妙なバランスを保ちつつ関係を深化させ、
毎日愉快なパフォーマンスを繰り広げてくれます。
あのやせっぽガリガリだったぴっちは、筋肉ニャンに変身、
消火器で押さえたふすまを、軽々と開けられるように
なってしまいました。
動物飼育禁止令の敷かれたマンションの最上階にある
わが家は、いまや治外法権エリアと化した感があります。
(でも、これを読まれた方は、どうかご内密に!)

ここに、さらに赤ちゃんが出てくることになるとは、
まだまだ誰も(私たちさえ)知らない時代でした。
by papanatti | 2005-03-23 23:03 | ペット

猫がうちに来た日

さて、いよいよ猫の登場です。
きっかけは、3年前から今にいたるまでゆきちゃんがハマっている、
クレイジーケンバンドの私設応援団であり
ベーシストの洞口信也の熱烈なファンがつどう
「信也隊」というサイトを、彼女が
毎日のように訪れていたことにあります。
たしか6月のある日、そこの掲示板に
「捨て猫を拾いました。だれか飼ってくれませんか」
という悲痛な叫びが掲載されたのです。
書き込んだのはCKB信也隊@ィ横浜支部長の
〈たこやきにゃんこ〉さんでした。

じつはゆきちゃんは、数年前から猫を飼いたくて
しかたがなかったのですが、ひまわりも飼ってしまったので
例によって私が猛反対していました。
しかし「見にいくだけでいいから、行ってみようよ」と
連日のようにせっつかれ、私も数日後
「じゃあ、ほんとに見るだけね」と
軽い気持ちで出かけたのです。
にゃんこさんと鹿島田駅で待ち合わせ、あいさつもそこそこに
彼女の運転する車で、猫が一時預けられている雑貨屋さんへ。
するとそこには、生まれて間もない
小鳥ぐらいの大きさの子猫が3匹、レジの横のかごの中で
じゃれあっているじゃござんせんか。
(う…カワイイ…)
そのときから私の「猫を飼うなんてとんでもない!」という
鉄壁かにみえた心の鎧は、なにやらあやしげな
シースルーのランニングシャツに変貌してしまったようです。

聞けば子猫たちは、近所の保育園の庭に捨てられていたが、
なんとそこの先生が、箱に入れて外につまみだしてしまった
というのです。
よくもそんなひどいことをするもんだ! と、にゃんこさんは
怒りをあらわにしながらも、1匹でも託したいので、
「どうですか?」と私たちに決断をせまってくる。
うーん、これはまいったぞ。
ゆきちゃんの友だちのチバちゃんにあげようか?
いらないって言うかも知れないしなあ…
それなら他にだれか探せばいいか。
こんな可愛いなら、もらっていっても、何とかなるだろう。
などと思いながら、3匹のうちどれにしようかと
品定めに移っていました。

いかにも子猫らしく元気よく無邪気にはねまわっている
2匹にくらべて、黒白模様の子はなんだか動きがなく
ボーっとした感じで、なんとなく頼りなげな雰囲気を
漂わせていました。
私の気持ちは、なぜかその子に傾いていき、
小一時間ほどたったときには、ゆきちゃんに
「1匹もらっていこうか」と言っていました。
「そうする?」
「うん。チバちゃんにあげてもいいし」
「そうだね。…じゃ、どれにする?」
こうして選んだのが、『こねこのぴっち』そっくりの子でした。

紙袋にタオルを敷いて子猫を入れ、
再びにゃんこさんに送ってもらいました。
駅で、こんど「信也隊」の集まりに誘ってもらう約束をして
別れました。
さあ、それからです。
お腹がすいたので、駅のそばの中華食堂で昼ごはんを
食べたのですが、袋の中はガサゴソもせず
ニャーともいいません。そっと見てみると
まるくなってスヤスヤ眠っていました。
さらにJR線、小田急線と乗り継いで帰ってくるあいだ、
まったく音をたてなかったのです!(次回につづく)
by papanatti | 2005-03-22 23:47 | ペット
平凡社の「この絵本が好き!2005年版」が送られてきた。
わが社の『しょうぼうていハーヴィ ニューヨークをまもる』が、
〈2004年・注目の海外翻訳絵本10冊〉に選ばれていた!
カラーで本の写真が出ていて、とてもうれしい。
これを見て、手にとってくれる人がまた増えるだろう。

c0073018_1228624.jpg同じ「この絵本が好き!2005年版」にのっている、絵本好きによる〈わたしのベスト絵本〉アンケートで、
ブックファースト渋谷店児童書担当の米野有美さんが、
やはりハーヴィを挙げてくれている。
そのコメントに
「何かと言われる事の多いアメリカですが、人が力をあわせて何かをつくりあげる気持ちは国籍など関係なく素晴らしい事です。…
9・11を題材にした内容なので、様々なシーンで読まれる事を願っています」

と、いただいた。c0073018_1248441.jpg
米野さんは、私が最初にこの絵本の案内を
持って行ったとき、即座に
「これはいいですね。ぜひ売りたいと思います」
と言って注文してくれた人だ。
児童書売り場では、エスカレーターで上がってゆくと
まっさきに目に入ってくる位置に、
面陳で並べてくれた。

やはりアンケートでハーヴィを挙げてくれたのが、
ナディッフ店長の正田和実さん。
この方にはお会いしたことはないが、
bunkamuraのナディッフ店長の五十嵐さんには
お世話になっている。
こうしてさまざまな場所でハーヴィは、
毎日新しい人とめぐりあっているのだと思うと、
この絵本の力をあらためて実感する。

いま、ゆきちゃんと話しているのは、
ハーヴィを持って、私たちが子供たちのいる
いろいろな場所出向き、この絵本を読み聞かせたり
子どもたちと話をしてみたい、ということだ。
どんな集まりが持てるのか、計画しはじめたばっかりだ。
近いうちに、それを発表したいと思う。
by papanatti | 2005-03-19 23:15 | 絵本

ちび改め「ひまわり」

みるが産んだ4匹の子は、全部メスでした。
1匹ぐらいオスが出てもよさそうですが、
天の配剤はわからないものですね。

4匹がひとかたまりになって、おしくらまんじゅうをしていたころ、
ゆきちゃんと私は、新しい出版社をつくる準備を進めていて、
社名を何にするか、いろいろ考えていました。
そのとき、ゆきちゃんが前年まで契約社員として勤めていた
実用書出版社でアルバイトをしていた岡部君が
子犬を見たいといって遊びにきました。
ひとしきり子犬たちをみたあと、近所のドトールで
お茶を飲んだのですが、社名の話になって
「“こいぬ出版”ってどうですか」と彼が言うので、
「こいぬかあ…こいぬ…リトル・ドッグ…リトル・ドッグ・プレス」
「いいね、それにしよう!」
こうして社名が決定したのです。

4匹のうち、まる、のび、くろ、といなくなって
最後に残ったちびは、うちで飼うことにしました。
こいつをリトル・ドッグ・プレスの「看板犬」にしよう!
ということで、これも命名に一苦労しましたが、
最終的に「ひまわり」と決めました。

ひまわりはホントに無邪気で明るくて
しぐさも愛らしく、みるといっしょに散歩していると、誰からも
「可愛いわね!」と声をかけられたものです。
よその犬に対しても、積極的に尻尾を振って近づき
すぐに仲良くなるという特性を発揮しました。
うちのホームページでは、藤井リエさんが
ひまわりをモデルにした「リトル・ドッグなまいにち」を
連載してくれました。
(もうすぐリニューアルをしますが、新作を準備中です。乞うご期待!)

その後ひまわりは思春期を重ねるごとに、
だんだん好き嫌いがはっきりしてきて、3歳になった今では
嫌いな犬にはわんわん吠えたりします。
さんざん悩まされたイタズラ(靴やスリッパや敷物などを
いくつもいくつもかじられ、そのたびに叱るのですが
いっこうに改善されませんでした)も、
2歳を過ぎたころから少なくなり、現在はまったく
といっていいほどしなくなりました。
ただ、ものすごく甘ったれで、いつもみるかあさんの
庇護のもとに安住しています。
だって、みるはいまだにひまわりの首筋を
こまかく噛んでグルーミングしてやるんですよ!
by papanatti | 2005-03-17 20:04 | ペット
アメーバブログで
「子供と絵本と私」というサイトを発見!
4歳と1歳の女の子のお母さんの〈絵本ナビ〉のような
ブログです。
『ねぇ、どこいくの~?』を、とても楽しんでくださったようです。

「とにかく絵がかわいくて、細かいところまで、かかれてて、ぜーったい女の子が好きな本だと思います。」

と、書いてくださっています。

「子供の反応:上の子は、意外にも、反応薄かったような・・・・。」
とのコメントは、1歳のお子さんのほうが喜んだということかな。
そうそう、とにかく色がきれいなので、
うちの赤ちゃんも好きです。
こういう反応を教えていただけると、とってもうれしいです。
みなさん、ヨロシク!
by papanatti | 2005-03-16 20:19 | 絵本

ご出産!

ちょっと話題が赤ちゃんに行っていましたが、
きょうはみるの妊娠の続きです。

クロちゃんの子を宿したみるは、無事
12月17日に4匹の子どもを出産しました。
1匹目が生まれたのは夕方6時半ごろ。
それからほとんど正確に、1時間おきに1匹ずつ産み、
最後に産んだのが9時半でした。
薄茶色の子が3匹と、黒い子が1匹です。
どの子の胎盤も、きれいに食べてしまい、
私たちは感心しました。
事前に獣医さんから、最近は胎盤を食べない犬が
増えていると聞いていたからです。
胎盤のなかには天然の子宮収縮剤が入っていて、
それを食べて子宮がうまく収縮すると
おっぱいがよく出るのだそうです。

みるはさすがに疲れている様子でしたが、
お医者さんから言われた通り、4匹をおっぱいに吸いつかせ、
乳が出るように刺激を与えました。
4匹はぜんぜん目が見えません。
みんなでぐにゅぐにゅ体をくっつけあったまま動いていて、
まるで軟体動物みたいでした。
その晩、犬たちといっしょの部屋で寝たのですが、
夜中に4匹がぞろぞろ、なぜかゆきちゃんの布団に
もぐりこんできて、初めてのフンをしたそうです。
(といってもほとんど水分はなく、ちっちゃな黒いゴムのような
ものだったらしいのですが、私はよく覚えていません)

さて、それからが大変でした。
毎日少しずつ大きくなる子犬たちの体重を量り、
4匹が満遍なくおっぱいにありつけるよう交通整理し
(4匹には生まれた順に、のび・ちび・まる・くろ
と仮名をつけました。
まる:いちばん大きくて力もある。おっぱいもぐびぐび呑む。
ちび:いかにも華奢なつくりで、おっぱい争奪戦も弱い。
のび:動きはのんびりしているが、体格はいい。
くろ:小さくて黒い。しかし動きはなかなかすばやい。)
おしっことウンチを掃除し…
少し大きくなって、目が見えるようになると
どんどん活動量が増え、4匹がいっせいに家の中を
ものすごい勢いで「ドドドドド! ドドドドドー!」と
駆け回るのにはまいりました。

で、貰い手探しを始め、まる、のび、くろ…と
順調に貰われていきました。
のびがもらわれた先は、うちの近所のお花屋さん
「ラ・ブーケティエール・ブレオ」です。
ここは、フランスで花屋の修行をしてきた若い夫婦が開いた
とてもおしゃれなお店です。
犬好きのお客さんも多くて、リトル・ドッグ・プレスの最初の本
『ねぇ、どこ行くの~?』をお店に置いてもらったら、
たちまち20冊以上も売ってくれました。
その後も絵本を出すたびに協力してくれているんです。
のびは、そこで「マグ」という新しい名前をもらい、
お店の看板犬として仕事をさせてもらっています。

つぎは、ウチに残った「ちび」のことを書こうと思います。
by papanatti | 2005-03-16 18:44 | ペット

はじめてのベンピ

…じつは夏ちゃんは、ここ4日間〈便秘〉だったのだ。

先週木曜日の夜、食事のときにベビーダノンをあげたのだが、
食べるは食べるは、結局1カップまるごといただいてしまった。
ところが、翌日ウンチが1回も出ない。
ま、そういうこともあるのか、と特に気にもせず
次の日を迎えた。
いつもなら、朝オムツの中にしているか、
新しいオムツに替えてしばらくすると出るのだけれど、
いつまでたっても音沙汰がない。
「出ないね」
「だいじょうぶかな」
「いまのところ、苦しそうでもないから、いいんじゃない?」
と、少し心配になりながらも2日目を過ごした。

3日目。相変わらずオムツの中はおしっこだけ。
この日は目白まで出掛けたが
夏ちゃんはそれでも平気な顔してふつうにおっぱいを飲むし
夜はいっしょにいろいろなものを食べる。
ごはんとか、パンとか、ゆでたジャガイモとか…

4日目、というのはきのうのこと、ハタと気がついた。
「もしかして、ベビーダノンのせいじゃないかな」
「そうか…きっとそうだ。中に入ってる〈増粘多糖類〉のせいだよ」
「うわあ、そいつがいろんな食べ物をくっつけて
どんどん団子状になってるのかもしれない」
「カンチョーでもする?」
「それより医者に見せたほうがいいかも」

こうして今朝を迎えたが、やっぱりオムツの中はおしっこだけ。
おなかの様子はまあポンポコだが、
パツンパツンにはなっていない。
ひとまずドトールで買ってきた朝昼兼用の食事をしていたとき、
いっしょのテーブルにくっつけてあるベビーシートに座っていた
夏ちゃんのおしりから、なにやら鈍い重低音が聞こえた。
1回目はとても小さくて、ゆきちゃんが
「あれ?」と耳をそばだてた。
私が「え?」と夏ちゃんを見ると、ちょっと気張っていたが、すぐに
ぼぼぼぼぼ…という音がした。
「出たみたい!」
「うん、出たね!」
食事そっちのけで夏ちゃんをソファに横にして
調べてみると(お食事中の方、失礼します)
なんと、オムツからはみださんばかりに素晴らしい量のモノが
放出されていた。
オムツを取り替えて「夏ちゃん、よかったね!」
と声をかけると、よっぽど気持ちがいいのだろう、
にこにこしながら何回も手足を伸ばしていた。

教訓。
離乳食に、〈増粘多糖類〉の入ったものを
食べさせすぎると、赤ちゃんは便秘を起こすので、
せいぜいスプーン3杯ぐらいにとどめるのが賢明である。
(ホント?)

どなたか、同じような経験をされた方がいらっしゃったら、
そのときの模様を教えていただけませんか?
by papanatti | 2005-03-15 18:27 | 赤ちゃん

夏ちゃんの外出

きのう記入が抜けたのは、久しぶりに夏ちゃんをつれて
ゆきちゃんといっしょに目白まで出掛けたからだ。
夏穂を外につれて行くのは何週間ぶりだろう。
考えてみると、少なくとも3週間はたっている。
それも、前回はごく近所のラーメン屋まで
歩いて行っただけで、
電車に乗って出掛けたのは2ヶ月も前。
夏ちゃんは外に行くのがとても好きで、
いろんなものや人を見るのが楽しいのだ。

きのう、行きは私がスリングに夏ちゃんを入れて
抱っこして、小田急で新宿へ出て、
それからJRで目白までの道中、
電車の中で、近くにいる人を見回したり
窓の外に流れる風景を目で追いかけたり
興味津々だった。

目白で用事をすませると、ちょうどお昼だったので、
駅のそばの寿司屋に入った。
ふとみると、夏ちゃんはちょっと疲れたのか
スリングの中で寝てしまっていた。
寿司屋の小上がりの座布団の上に夏ちゃんを寝かせ、
ゆっくり食べることができた。
ランチタイムだったが、日曜日のせいで
それほど混んでいなかった。
となりのサラリーマンふうのおじさんたちが
「きょうはすいてるな。いつもは満員になるのにな」
と、話していた。
頼んだのは〈たいから丼〉。
これがおいしかった。
ちらしの器の中に、ごはんが敷いてあり、
その上にサーモンとたいといくらが載っている。
たいには、からみそがかけてあり
これも辛すぎず、さりとてぼんやりした味でもなく、
うまみが凝縮されたみそだった。

和服をきたお運びのおばさんが、夏ちゃんに気がつき
「可愛いですねえ、よく寝てるわ」
と目を細めてくれた。
食べ終わって、こんどはゆきちゃんが
もういちどスリングに入れようとすると
夏穂が目をさました。
起きていたら、テーブルの上の食べ物を
よこせよこせとうるさかったに違いない。
じつにいいタイミングで寝てくれたものだ。

お勘定をすませて外へ出ると、ゆきちゃんが
「あ、雪」
と上を見上げた。
なるほど、気がつかないくらいの小さな雪片が
いとつふたつ舞っていた。
「雪になるって言ってたのが当たったね」
「うん、早く帰ろう」
いそいでJRに乗り込むと、どんどん雪が降ってきた。
「これが最後の寒さだって」
「ふうん」
夏穂にとって最初の冬は、
風邪もひかなかったし、どうやら無事に過ごせそうだ。

小田急に乗って、優先席に腰掛けてしばらくすると、
左隣に座っていたおばあさんのことを、
夏ちゃんが首を回して何回も見るので、
おばあさんがゆきちゃんに話しかけてきた。
「赤ちゃんって、何にでも興味があるのね」
「そうですね」と、ゆきちゃんが答えると
「赤ちゃんはしゃべれないだけで、いろいろわかってるそうですね。
人間になるための神経ができあがってないぶんだけ、
別の感じる力があって、何が起こっているか、ぜ~んぶ
わかってるって、誰かがいってましたよ」
ゆきちゃんが
「助産院の先生が、
3歳くらいまでは自分が生まれたときのことも覚えているから、
少ししゃべれるようになったらきいてごらん、って言ってました」」
と答えると、びっくりして
「そうなんですか。いろいろ情報があって、今の人はいいですねえ。
私なんか、なんにも知らなかった…」
と、夏ちゃんを見ながらいろいろ話を始めた。
「こないだ電車の中でおんぶされてた赤ちゃんが
いたんだけど、その子がおもちゃを手に持っていたのね。
おかあさんが、それを落とさないように取り上げちゃったんですよ。
そしたらその子が泣き出しちゃってねえ。
あれは年寄りと同じね。
持ってるものを、ぎゅ~っと握って離さないってところ」
とか、ぽつぽつ話が続いていた。
そこへ代々木上原からもうひとりおばあさんが乗ってきたので、
私がゆきちゃんの右の席をあけると、その人もすぐに夏ちゃんの顔を見て、
「あら可愛いこと。いまどのくらい?」
とたずねてきた。
とにかく夏穂は、おばさんやおばあさんにモテるのだ。

経堂で電車を降りると、もう雪は降っていなかった。
ちょっとドトールで一休みして帰宅。
そのあと、夏ちゃんはさすがに疲れたらしく
夕方までソファでぐっすり眠った。
春になれば、犬たちといっしょに毎日でも散歩できるだろう。
by papanatti | 2005-03-14 14:12 | 赤ちゃん

ねぇ、どこいくの~?

きょうはちょっと絵本のことを書こう。

3年前に出版社を始めたとき、最初に出したのが
かべやふよう(壁谷芙扶)さんの
『ねぇ、どこいくの~?』だった。
彼女とは、山口正児さんの紹介で知り合った。
その後壁谷さんの展覧会が
千駄ヶ谷の“ギャラリーef”で開かれたので、
ゆきちゃんと2人で見に行った。
明るい絵がたくさん並んでいたが、
なかでも心ひかれたのが
小さな女の子がたくさんの犬につなをつけて
うれしそうに引っ張られている一枚だった。
その普通ではありえないシチュエーションに
絵の前でゆきちゃんと大笑いしてしまった。

そのあと、壁谷さんといろいろ話しているうちに
「この女の子を主人公にした絵本を
つくりたいなあ…」
という気持ちになったのだった。

私たちが青春出版社から出した、渡辺怜子さんの
『イタリアの陽気な食衣住』にレシピ用のイラストを
彼女に描いてもらったのはそのあとだ。

それから約1年。
ほぼ原画が出来上がったときは、
まだ出版社をつくってはいなかった。
とても可愛くてパワーのある絵が
たくさん仕上ったのは、壁谷さんの努力のたまものである。
どこかに売り込もうか、どうしようかと悩んでいるうちに、
ゆきちゃんが実用書出版社の契約社員になったり
みるが妊娠したりと、いろいろあったのだった。

とにかく、それまでは絵本をつくろうと思ったことは
まったくなかった。
好きな絵本はもちろんあったし、
毎年日本橋の丸善でやる世界の絵本展に
ときどき行ったりはしていた。
日本には、なかなか綺麗な絵本がないなぁ、
と思ったりもしていた。
中身も、いかにもお子様ランチ風
(お子様ランチもいいものだけど)が多く目立つので、
あまりよく考えたりしなかった。

それが、こうしてとてもいい絵を描きあげてもらった。
なんとか、これを自分たちで出版したい……
と思いはじめたのが、リトル・ドッグ・プレス誕生の
きっかけになったのだ。
by papanatti | 2005-03-12 10:01 | 絵本